むつ市水源池公園内のシンボル的存在、沈澄池堰堤(ちんちょうちえんてい)を含む明治時代後期に建設された「旧大湊水源地水道施設」が、平成21年12月8日に重要文化財指定を受けています。東北地方で最初に建設された近代水道施設で、歴史的価値と建設技術が非常に高いと評価されました。

     

概要

立地環境

 本州最北端下北半島の釜臥山(標高879メートル)に連なる七面山(標高535メートル、通称:抱山)の裾野に拡がる宇田川流域の河岸段丘上に都市公園として整備された水源池公園内にあります。公園内には約200本近くの桜が、また周りは国有林に囲まれており、四季を通じて市民が訪れる憩いの場となっています。

 背後には釜臥山スキー場、南側には国道338号を挟んで海上自衛隊大湊地方総監部、さらに周辺には石造構造物(水交社、官舎、倉庫等)が残っており、このうち水交社は「北洋館」という名称で海上自衛隊の歴史資料を展示しています。

歴史

 明治35年:大湊水雷団開庁。艦船補給用水の確保を目的として水道施設が整備

 明治38年:大湊要港部へと改変。水道拡張工事が行われる。

 明治43年:水道施設完成

 昭和16年:大湊警備府に改称

 昭和20年:大湊警備府閉庁。水道施設としての役割を終える。

 昭和21年:大湊町が水道事業を開始(その後むつ市)

 昭和51年:水道事業休止

 昭和53年:水源池公園として保存、公開

 昭和59年:むつ市有形文化財(建造物)に指定

 昭和60年:近代水道百選に選定

 平成5年:青森県重宝(建造物)に指定

 平成13年:土木学会選奨土木遺産に認定

 平成21年:国の重要文化財(建造物)に指定

 平成22年:旧大湊水源地水道施設 総合調査報告書刊行(平成23年第2刷刊行)

        

     堰堤と取水塔(沈澄池側)      乙水槽上屋   ※いずれも昭和50年代

 

      総合調査報告書

施設
1.第一引入口(だいいちいんにゅうこう)

 宇田川の中流域に位置する一辺3mの枡形の石造構造物です。集水、浄水、送水の機能を一体化した、旧大湊水源地水道施設を構成する構造物の中では一番古い施設です。 宇田川から取り入れた流水の上澄みを同時期に竣工した造られた貯水池に送水していました。(明治35年)

   

2.沈澄池堰堤(ちんちょうちえんてい)

 旧大湊水源地水道施設の中でも特に象徴的な構造物です。重力アーチ式石造堰堤で、4箇所の排水溝、正面中央には取水塔が設けられています。沈澄池には、宇田川、大近川(現大湊川)等から集水していました。その水の土砂を沈澱、清浄化させ、良質の水を乙水槽へ送水していました。
堰堤の長さは27.5m、高さ9m、深さ8m、沈澄池の貯水量は5,000トンで、艦船のほか官舎等に水を供給していました。(明治42年) 

       

3.乙水槽(おつすいそう)

 沈澄池から引かれた水を、濾過池と艦船給水所の2方向に分岐するために造られた、内径約2.5m、深さ3.9mの円筒形の煉瓦造構造物です。水槽の上には正八角形平面の木造上屋を設けています。(明治43年)

     

4.附 大近川取水所(つけたり おおちかがわしゅすいしょ)

 沈澄池より約800m西南に位置し、取水した水を沈澄池まで鉄管路で送水していました。取水施設は長さが約6.8m、幅1.4m、深さが最大で約3.8mという構造です。その上・下流約40mは石造水路となっています。昭和51年まで、水道施設として水源池公園内同様使用されていました。(明治43年)

   

5.附 甲水槽(つけたり こうすいそう)

 この水槽は沈澄池堰堤南側に造られ、大近川からの導水を一旦貯め、沈澄池や濾過池に直接送水する機能を持っていました。内径約2.5m、深さ3.9mの煉瓦造構造物です。大正8年、水道拡張工事に伴い使用中止となり、上屋は解体撤去されました。(明治43年)

        

保存活用

保存及び修理事業

 重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針(平成11年3月24日、文化庁)に基づき、市では学識経験者等で構成する、旧大湊水源地水道施設保存活用計画検討委員会を設置し、平成25年度に「重要文化財旧大湊水源地水道施設保存活用計画」を策定しています。この計画をもとに、保存管理、修理、環境保全、防災、活用について事業を進めています。

    

保存管理と環境保全、防災

 公園は、北の防人大湊として整備が行われ市が管理しています。

     旧濾過池を利用した花壇 

修理

 平成25年度より修理に向けた取組をしており、同26年度からは専門的有識者で構成する、旧大湊水源地水道施設修理専門委員会を設置し、修理計画を策定し、平成28年度より修理を実施しています。

 第一期修理工事(平成28年度~令和元年度終了):乙水槽、大近川取水所

 第二期修理工事(令和2年度~令和6年度 予定):沈澄池堰堤(堰堤本体、貯水池、水路)

 第三期修理工事(令和6年度~       予定):第一引入口、甲水槽

       

活用

 活用については3つの基本方針を立てています。

  1. 市民の憩いの場として活用する。
    安心で安全な公開をするための環境整備が主な取組です。また、周辺散策ルートを設定し歴史と自然を感じてもらえるような活用を目指しています。
  2. 旧大湊水源地水道施設の価値を伝えるよう公開活用する。
    近代化遺産としての価値、水道の歴史等を学ぶ取組です。説明看板を設置すると共に、これまで収集してきた資料を公開したり、校外学習や生涯学習の拠点となるような活用を目指しています。
  3. 旧大湊水源地水道施設と周辺施設の一体的な公開活用を行う。
    北の防人大湊事業で整備された周辺の施設と連携し、ボランティアガイドを設置して旧大湊水源地水道施設が際立つような運営、企画を目指しています。

 

ボランティアガイドは平成28年に発足し、校外学習の他、たくさんのお客様を案内しています。また、地元小学生によるジュニアガイドも活躍し、年に1度、ツアーを実施しています。